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キャシュフロー計算書でお金の流れをつかむ
当該コラムは、2021年03月に「トレーダーズ・プレミアム」向けに掲載したものを加筆・修正しております。 「トレーダーズ・プレミアム」では定期的に新作コラムを掲載しております。 ぜひご加入をご検討ください。

キャシュフロー計算書でお金の流れをつかむ

 今回はキャッシュフロー計算書について解説します。キャッシュフローに注目することで、損益計算書とはまた違った企業の姿が見えてくることもあります。

キャッシュフロー計算書では3種類の活動を確認

 キャッシュフロー計算書は決算短信に記載されています。第1、第3四半期に関しては省略が認められているため、基本的には上期(2Q)および通期で確認することになります。 キャッシュフロー計算書は、営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)、投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)、財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)の3つの要素で構成されます。

営業活動によるキャッシュフロー
 本業におけるキャッシュの流れを見る項目で、税引前利益に各種項目を加減して算出されます。損益計算書の利益とは必ずしも一致しない点がポイントです。損益計算書上では利益となっていても、 掛け販売などが多い場合などは、現金化されていない項目は減額要因となります。また、減価償却費はキャッシュアウトを伴わないため増額要因になりますので、装置産業などでは、その分が大きく上乗せされることが多いです。

投資活動によるキャッシュフロー
 投資によるキャッシュの流れをみる項目です。工場などの設備投資や、M&Aなどに関する資金の流れを確認できます。企業は成長のために投資を行う必要があります。そのため、この項目はマイナスとなることが多いですが、 資産を売却した場合や、投資を回収した場合などは、プラスとなることもあります。また、一般的には投資は営業CFの範囲内、すなわち営業CF>投資CFとなることが健全と見られています。

財務活動によるキャッシュフロー
 企業が借り入れやファイナンスをした場合の、資金の流れを確認できます。銀行からお金を借りて実際に入金された場合などは増額要因となり、その借入金を返済すれば、減額要因となります。 また、自己株取得や配当など、株主還元にかかる費用も財務CFに含まれます。

キャッシュフロー計算書から企業の実態を探る

 それでは、具体的に企業のキャッシュフロー計算書を見てみましょう。まずは大手半導体メーカーのルネサスエレクトロニクス(6723)です。

ルネサスエレクトロニクス(6723) 単位:億円
営業CF 投資CF 財務CF 現金及び現金
同等物期末残高
2019年12月期 2020 -7422 5005 1465
2020年12月期 2239 -402 -1045 2198
(20.12期決算短信をもとに作成)

 19.12期は投資CFが営業CFを大きく上回っており、財務CFも大幅なプラスとなりました。大型の企業買収があり、その資金調達で金融機関から巨額の借り入れを行ったことが要因です。一方、20.12期は前年の反動で投資CFは減り、 借入金の返済も行ったことで、財務CFはマイナスとなっています。なお、同社の税引前損益は、19.12期は3億円の赤字、20.12期は652億円の黒字ですが、装置産業で減価償却費などの増額要因が多いため、 営業CFはどちらも2000億円強のプラスとなっています。
 また、営業CFと投資CFを合計したものを、フリーキャッシュフロー(FCF)と言います。企業が自由に使えるお金と言えるもので、 同社の場合、19.12期は5402億円のマイナスに対し、20.12期は1837億円のプラスとなっています。

JT(2914) 単位:億円
営業CF 投資CF 財務CF 現金及び現金
同等物期末残高
2019年12月期 5404 -1236 -3338 3572
2020年12月期 5198 54 -2974 5388
(20.12期決算短信をもとに作成)

 次に、JTのキャッシュフロー計算書を見てみましょう。19.12期、20.12期とも営業CFは5000億円強のプラスで、投資CFも営業CFの範囲内にとどまっています。 20.12期の投資CFは投資不動産や株式売却などがあった影響でプラスとなりました。また、同社は高配当銘柄として有名で、支払い配当金の金額が高水準である分、財務CFは大きなマイナスとなっています。

特に重視するのは営業CF

 普段、決算短信をチェックする際には、営業利益や最終利益の増益率に注目する方が多いと思います。ただ、会計上は利益が出ても、それをしっかり回収して現金化できなければ意味がありません。資金が回らない場合、黒字倒産といったことも起こりえますので、キャッシュフロー計算書の確認も重要です。キャッシュに注目するので、粉飾がしづらいといった利点もあります。特に営業CFがポイントで、営業利益の額は大きくても営業CFがマイナスの場合、 どこかで無理をしている可能性があります。業績が急激に悪化した企業や、自己資本比率が低く財務の健全性が劣る企業などでは、特に資金の流れに注意を払っておいた方が良いと言えます。

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NYダウ 37,986.40 +211.02
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