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「低PER銘柄=お買い得」ではない
当該コラムは、2020年08月に「トレーダーズ・プレミアム」向けに掲載したものを加筆・修正しております。 「トレーダーズ・プレミアム」では定期的に新作コラムを掲載しております。 ぜひご加入をご検討ください。

「低PER銘柄=お買い得」ではない

 銘柄を選ぶ際によく使われる指標として、PER(株価収益率)があります。株価を1株当たり純利益で割ったもので、一般的にPERが高い銘柄は割高、低い銘柄は割安と言われています。

PER(倍)=株価/1株当たり当期純利益

 高値つかみのリスクを避けるという点では、PERの低い銘柄の方が安心といえます。ただ、「低PER銘柄を買っておけば、割安なのだからいつかは上がる」というわけではありません。今回は低PER銘柄に内在するリスクと、投資する際の注意点について考察します。

低PBR銘柄は先行きの見通しに不透明感が強い

 PERが低位で放置されている企業の特徴の一つとして、業績への期待が高まりづらいという点があります。かつての日本では、繊維や鉄鋼が花形産業となり、その後は自動車や電機がその立ち位置を受け継ぎました。 しかし、新興国の台頭などにより、今ではこれらの企業の先行きは厳しいものとなっています。今はある程度まとまった利益を出せていても、10年後には市場シェアが縮小するであろうと多くの人が考えている業種や、 ネットなどを活用した新しいサービスに事業領域が侵食されている企業では、たとえ来期の予想PERが低水準であったとしても、先々の利益先細り懸念から、株式市場では物色の蚊帳の外に置かれることが結構あります。同様の観点から、減益決算続きの企業の株価も、 低PERというだけでは買いが入りづらい傾向があります。

10年後も同じくらいの利益を出せる??

 先行きへの懸念はある程度許容した上で低PER銘柄に投資したい場合、業界内では勝ち組となっている銘柄、または財務が非常に安定している銘柄など、プラスアルファの要素があった方が、より安心といえます。業界再編などが起こった場合に、そのリード役になる、もしくは多くの企業からラブコールを送られる立ち位置になる可能性があり、そういったことになれば、低PERであることはその銘柄にとって強い買い材料にもなり得ます。

 なお、先行きの見通しが明るい業界に属する企業や、右肩上がりで利益が伸びている企業に関しては、一般的には妥当、もしくはPERでみた際には割高と言える水準まで評価されているものが多いです。

低PER銘柄は業績が大きく変動して読みづらい

 もう一つ低PER銘柄の特徴として、業績が安定しないという点があります。商社株などは低PERかつ、低PBR(株価純資産倍率)となることも多く、指標面で割安感が強い業種の代表格として取り上げられることがよくあります。ただし、商社は事業領域が多岐に渡る上に、資源価格の影響を大きく受けることが多く、業績が読みづらい傾向があります。ある年の純利益が大幅増益となったかと思えば、その翌年には大赤字となるといったことも珍しくありません。そのため、不透明な分がディスカウントされて低PERが常態化することがあります。

 不動産でマンション販売比率が高い企業なども同様の傾向があります。大型のプロジェクトなどでは、利益がある年に一括計上されることも多く、単年度の利益にはムラがあります。また、マンション販売は金利の動向などにも大きく左右されやすく、好不調の波が激しい業態でもあります。

 こういった業績の振れ幅の大きい業態で低PER銘柄に着目するのであれば、配当や自社株買いなど、株主還元策にも注意を払うことをお勧めします。浮き沈みが激しい業態で安定配当を実施している企業は、中長期のリスクコントロールに長けているとも考えられます。また、低PER銘柄への投資は、基本スタンスは安いところで仕込んで上昇を待つ持久戦になります。配当政策が優れている企業は、長く保有するのにより適していると言えるでしょう。

業績の浮き沈みの激しい低PER銘柄は株主還元も要チェック
まとめ

 2020年はコロナ・ショックにより、多くの企業の業績が落ち込みました。人々の行動にも変化が出てきたことから、この先、コロナ前の利益水準を回復するハードルが高くなった企業も多くなると思われます。今期は最終赤字計画の企業も多い中、低PER銘柄の注目度が高まることもあるかもしれません。ただし、低PER銘柄は指標面では割安感があっても、お買い得とは限らないという点は注意しておく必要があります。日本株は2月~3月に急落した後は比較的堅調に推移しています。その中でも低PERで放置されているというのは、何らかの買いづらい要素があるとみるべきです。

 とは言え、そのような中でも埋もれている銘柄は存在します。なぜ低PERとなっているのかを自分なりに分析し、今回挙げた財務や株主還元の要素なども踏まえて銘柄を選別すれば、お宝銘柄に出会える確率も高まるでしょう。

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