IPO銘柄詳細

ビジョナル

コード 市場 業種 売買単位 注目度
4194 マザーズ 情報・通信業 100株 A
スケジュール
スケジュール
仮条件決定 2021/04/06
ブックビルディング期間 2021/04/06 - 04/09
公開価格決定 2021/04/12
申込期間 2021/04/13 - 04/16
払込期日 2021/04/21
上場日 2021/04/22
価格情報
想定価格 4,355円
仮条件 4,500 - 5,000円
公開価格 5,000円
初値予想 6,250円
初値 7,150円
  • スケジュールは上場企業都合により変更になる場合があります。
基本情報
代表者名 南 壮一郎(上場時44歳10カ月)/1976年生
本店所在地 東京都渋谷区渋谷
設立年 2020年
従業員数 30人 (2021/02/28現在)(平均39.7歳、年収1117万円)、連結1204人
事業内容 プロフェッショナル人材に特化した会員制転職プラットフォーム「ビズリーチ」などの運営
URL https://www.visional.inc/
株主数 35人 (目論見書より)
資本金 436,061,000円 (2021/03/17現在)
上場時発行済株数 35,591,100株(別に潜在株式6,248,400株)
公開株数 13,643,300株(公募2,127,700株、売り出し11,248,700株、オーバーアロットメント266,900株)
調達資金使途 マーケティング投資、人件費、事業買収など投資資金
連結会社 子会社5社,持ち分法適用関連会社1社
シンジケート
公開株数1,296,900株(別に266,900株)/国内分
種別 証券会社名 株数 比率
主幹事証券 野村 711,300 54.85%
主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 452,000 34.85%
引受証券 SMBC日興 28,500 2.20%
引受証券 みずほ 28,500 2.20%
引受証券 大和 28,500 2.20%
引受証券 楽天 21,400 1.65%
引受証券 SBI 21,400 1.65%
引受証券 マネックス 5,300 0.41%
大株主(潜在株式を含む)
大株主名 摘要 株数 比率
南壮一郎 代表取締役社長 16,864,400 42.47%
ジャフコ・スーパーV3共有投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 4,680,000 11.78%
島田亨 社外取締役 2,300,000 5.79%
YJ2号投資事業組合 ベンチャーキャピタル(ファンド) 1,721,400 4.33%
竹内真 取締役CTO 1,719,800 4.33%
JPN Entrepreneur Collab LTD. 特別利害関係者など 1,561,300 3.93%
永田信 取締役事業執行役員 714,800 1.80%
多田洋祐 取締役事業執行役員 580,000 1.46%
ジャパン・コインベスト投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 546,500 1.38%
村田聡 取締役業務執行役員COO 504,700 1.27%
グロービス5号ファンド投組 ベンチャーキャピタル(ファンド) 497,700 1.25%
Salesforce Ventures LLC ベンチャーキャピタル(ファンド) 494,000 1.24%
業績動向(単位:百万円)
は予想
決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2021/07 連結中間実績 12,167 1,512 1,665 1,086
2021/07 連結予想 26,700 960 840 390
2020/07 連結実績 25,879 2,186 2,254 4,658
2019/07 連結実績 21,492 514 511 335
売上高
営業利益
経常利益
純利益
1株あたりの数値(単位:円)
は予想
決算期 種別 EPS BPS 配当
2021/07 連結予想 11.92 559.23 0.00
参考類似企業
銘柄 今期予想PER(4/1)
JACR
21.5倍 (連結予想)
じげん
19.2倍 (連結見込)
ウォンテッドリ
3,123.1倍 (連結予想)
エンJPN
41.2倍 (連結見込)
リクルートHD
69.8倍 (連結見込)
キャリアインデ
45.6倍 (単独見込)
MS-Japan
28.3倍 (単独見込)
HUMANAHD
- (連結見込)
事業詳細
 転職プラットフォーム「ビズリーチ」の運営。求職者と人材紹介会社、採用企業の3者を結びつける転職プラットフォームのほか、採用や人材を管理するプラットフォーム、人材採用サービスなどを展開している。
 2020年2月に多角化への対応のため持ち株会社制に移行しており、上場する法人格はその時に設立された。それまでグループを率いていた現在は中核子会社のビズリーチの設立は07年8月である。新社名は「未来に生まれるさまざまな課題を、次々と『新しい可能性(=ビジョン)』に変えていこう」という思いから付けられた。

1.HR Tech
(1)ビズリーチ事業
 プロフェッショナル人材(管理職・専門職など)に特化した会員制転職プラットフォーム「ビズリーチ」を運営している。
 ビズリーチでは求職者(会員ユーザー)とヘッドハンター(人材紹介会社)、採用者の3者をオンライン上でマッチングする。採用企業のみならずヘッドハンター(人材紹介会社)と求職者からの課金も計上している。採用企業や人材紹介者への課金はプラットフォーム利用料に追加利用料、採用(支援)成功報酬であり、求職者の課金はプレミアム会員に対する月額利用料である。

(2)HRMOS(ハーモス)事業
 人財活用プラットフォーム「ハーモス」シリーズを運営している。採用から入社後の活躍までの情報を一元化・可視化することで、根拠に基づいた人財活用を可能にする。採用管理クラウド「ハーモス採用」と人材管理クラウド「ハーモス」があり、年額利用料金に加え後者は初期設定時の導入サポート料金も得ている。

(3)その他のHR Tech事業
 ターゲットとする年齢や職種ごとに人材採用支援サービスを提供している。具体的には、挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」、OB/OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」、ハイスキル情報技術(IT)エンジニア転職プラットフォーム「BINAR」、求人検索エンジン「スタンバイ」を展開している。

2.Incubation
 デジタル・トランスフォーメーションを進めることができる大きな市場ポテンシャルを有する領域において、新規の事業を行っている。具体的には、物流DXプラットフォーム「トラボックス」、事業承継M&A(合併・買収)プラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」、B2Bリードジェネレーション・プラットフォーム「ビズヒント」、オープンソースぜい弱性管理クラウド「ヤモリー」を提供している。

 2020年7月期の連結売上高構成比は、HR Tech 96.3%(ビズリーチ事業84.1%、ハーモス事業3.7%、その他事業-)、Incubation 3.4%。
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・直近(2021年1月)の特別利害関係者らによる株式売買単価は5123円。
・2019年7月期の実績は現事業子会社ビズリーチによるもの。
・海外販売株数は公開株数の85%に相当する合計1159万6900株(公募162万2600株、売り出し997万4300株)を予定している。
・上場時に残っている既存株主には180日(YJ2号投資組合のみ360日)のロックアップが掛かる。
・ロックアップ対象外のベンチャーキャピタルは、持ち株を全て売り出しに回す。
・今期中に行使可能な新株予約権はなし。


〈ファーストインプレッション〉
 ここのところ毎年上場候補に挙がっていたビズリーチがついに登場。広告だけみると単なる人材紹介会社もしくは転職サイトの宣伝のように見えるが、そうではなく求職者と人材紹介会社、採用企業の3者をマッチングさせるプラットフォームを運営しており、収益源も3者からいただく新しいビジネスモデルで成長している。
 なお業績は今期大幅減益の予想となっているが、これはコロナで先行きが不透明になった下期に広告宣伝費を抑制(前の期比4.7%減)したことと、前期に現在は持ち分法会社のスタンバイの事業分割による移転利益約48億円を特別利益に計上した反動を受けるため。企業再編前のビズリーチ時代の19.7期との業績比較では、営業利益は87%増、年率換算では37%増ということになる。
 ただし、希薄化後PSRは6.8倍という評価がどうなのかは判断しづらいところ。SaaSモデルでもないため10倍以下は割安とも言い切れず、利益も安定してでているようならそろそろPER評価に切り替えたいところだ。だがそちらを使うと365倍とトンデモ評価になってしまう。一方、ダウンラウンドのIPOにもかかわらず、ベンチャーキャピタルは売り出しで全株放出と想定価格には相当満足している様子だ。そもそも時価総額はエンジャパンに迫る水準である。
 海外比較ではリンクトイン辺りが挙がりそうだが既に上場していない。和製リンクトインのウォンテッドリーが近そうだが、ここの株価は適正な評価といえるのかがまず疑問なところ。最初から海外に85%を配分する強気な計画になっているからにはそれなりの感触あってのことだろうが、上値を追うイメージはしづらい。巡り巡って上場前の取引価格にサヤ寄せするといったところか。
仮条件分析 (BB参加妙味 :B)
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想定価格: 4,355円
 吸収資金レンジ: 582.5億円 - 594.2億円(今期予想連結PER: 365.4倍)
 時価総額レンジ: 1550.0億円

仮条件: 4,500円 - 5,000円
 吸収資金レンジ: 601.9億円 - 682.2億円(今期予想連結PER: 377.5倍 - 419.5倍)
 時価総額レンジ: 1601.6億円 - 1779.6億円

 仮条件は想定価格を3.33~14.81%上回る500円幅で設定された。また、公募の国内外の配分を変更しており、海外配分株数は合計1207万9500株となり配分比率は88.5%に上ることになった。
 また、合弁事業の維持・発展を目的に取引先のZホールディングスの投資子会社の運営するファンドに対し、上限20万株で親引け販売することを決定した。ZHDとは求人検索エンジン「スタンバイ」を合弁事業として運営している。

〈強材料〉
仮条件上振れ、海外配分比率過去最高、海外勢強気、グロース株、知名度高い、新しいビジネスモデル、前受け金多い、来期回復期待高い、親引け10億円分

〈弱材料〉
割高、吸収額大きい、今期微増収、競合多数

〈結論〉
 Bとする。公開価格が仮条件上限ならば、初値は6500~7500円を想定する。
 HR(人的資源)テック企業として成長期待は高く、海外勢の取得意欲は例によって相当に高いもよう。過去最高に設定された配分比率はさらに上方修正され9割近くに上ることになった。ブックビルディング期間は同期間の小型IPOより短いわずか4日だが、既に上限価格での支持も取り付けたもようだ。一方、時価総額は既にエンジャパン並み。売出人のベンチャーキャピタルはダウンランドにもかかわらず軒並み全株放出に同意しており、見方にはかなりの温度差があるようにも見える。高い海外配分比率は国内の冷めた見方の裏返しなのではないかとも思える。ブックビルディング参加の可否については問題ないが、どの程度上昇するのか予測はかなり難解である。

 持ち株会社制への移行により、総合HRテック企業の色を強めようとはしているが、今も売上高の9割近くはビズリーチ事業からとなっている。業績はさすがに今期は新型コロナの影響により売上高は微増にとどまる見通しで、営業利益は正社員を200名近く増員することが重しになり前期比56%減の9.6億円が予想されている。なお、前期の営業増益の要因は広告宣伝費の削減だが、雇用情勢が低迷するなか今期も広告抑制は続けておりこの費用は微増にとどめている。
 年によって上下はあるものの同社では毎期100名以上を採用していた。だが、20.7期の人員増は74名に抑えられており、結果的に今期はその反動が出るもようだ。インターネット企業でも求人関連は、顧客である採用企業への営業は人が行うため、成長のためには営業員を必要とすることが多く意外と労働集約型な面がある。

 18.7期以降は前身のビズリーチ時代から含めて経常黒字で推移するが、仮条件のPERは400倍前後と高い。希薄化後PSRなら最大7.8倍だが、これはエンジャパンやリクルートの倍近い水準だ。
 同社の「ダイレクトリクルーティング」と名付けられたビジネスモデルは、採用企業に加えて人材紹介会社からも収益を得る独自のものとなっており、粗利率は85%前後とエンジャパンの80%強を上回る。だが、求人サイトを運営していることには変わらない。人材紹介会社から払われる収益も元をたどれば原資は採用企業から払われているに過ぎず、結局は企業の採用費を人材紹介会社とどう分け合うかだけの問題である。ゆえに比較対象としては求人サイト各社で問題はないと考える。
 なお、粗利が高いのは同社が高級人材に絞っていることも大いに関係していよう。例えばエンジニアに絞るアトラエの粗利率は98%にも上る。成功報酬は一般的に年収が基になるため年収の高い人材に特化すると高くなりやすい。

 なお、PERでもPSRでも仮条件は説明が付きにくいが、今期はコロナの影響でどの企業も多かれ少なかれ業績はイレギュラーになっている。これは7月決算の同社にとっても同様だ。市場がアフターコロナを見つめるようになった今、プライシングは来期以降を見据えて実施されていると考えられる。
 同社は20.7期までは平均3割増収だったが、今期は3%に減速する。その反動で来期は4割成長を見込むと、営業利益は43億円に上ると考えられる。広告費は19.7期並みの80億円を前提に抑えることで、テコの原理により大幅な増益が実現される。この計算では来期PERは66倍になる。
 だが、求人サイト各社の来期コンセンサスPERはエンジャパン26倍、アトラエ26倍、ディップ25倍、リクルート47倍、じげん17倍、キャリアインデ43倍、人材紹介ならヒューマンA30倍、JACR15倍、ウォンテッドリー74倍となっている。
 リクルートは複合業態かつ雇用状況の異なる海外の比率が高い、送客モデルのじげんとキャリアインデ、人材紹介各社はビジネスモデルが異なることからすると、求人サイト専業の来期相場は20倍台半ばとみていいだろう。つまり仮条件は大幅に割高だ。来期予想には各自で誤差が出るだろうが、仮条件上限を正当化させるには来期営業利益は110億円に上る必要がある。これはエンジャパンのピーク時に近い。そもそも時価総額が既にエンジャパン並みというのも理屈が付けづらく、ベンチャーキャピタルがそろって全株売り出しに応じるのは当然の判断だろう。

 だが、現実には仮条件は想定価格に対し上振れに設定されたうえ、海外勢は例によって強気な様子が早くも伝わる。1月に5123円での売買に応じたのも買い手は海外投資家だった。
 彼らがいやに強気な背景として考えられるのは、同社が提唱する新しいビジネスモデルを過大評価している可能性だ。国内外で見方が大きく異なっているのは、海外とは大きく異なる日本の雇用情勢についてどれだけ詳しいかで差が出ているからではないか。
 この点ではビジネスSNS(交流サイト)による転職先紹介を提唱する、ウォンテッドリーが参考になりそう。規模が大きく異なり、カバレッジも入っていない企業を比較相手とするのがふさわしいかはともかく、仮条件を正当化できる唯一の相手ではある。海外同業と比較する方法も検討したが、それこそ各国で成長率や失業率には差が大きく、特に新型コロナからの回復が異なる今の局面ではなおさらふさわしくない。海外比率の高いリクルートのPERが高いからといって、各社がそれにサヤ寄せしようとしないのも同じ理由からだろう。

 国内勢の見方と海外勢の見方のどらが正しいかはともかく、需給的な面をいえば88.5%もの株式を海外勢が引き受け、さらに新しく最大10億円相当の親引けが決定したことで、国内の実質吸収金額は68億円程度に絞られる。グロース株のIPOでは海外勢に渡った株は現状は市場に出てきにくい傾向がある。
 一方、足元では初値買い意欲が後退し、海外投資家が参戦する案件にも影響が及んでいる。Appierやスパイダーを参考に、売買代金は50億~60億円に抑えられると想定すると6000円台後半が視野に入ることになる。来期業績の見方にもよるが、この価格は来期PERがウォンテッドリーを超えてくる。海外配分比率の高い案件として経験則的に視野に入る、公開価格の1.5倍まではみておきたい。
公開価格分析
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公開価格: 5,000円
 吸収資金: 682.2億円(今期予想連結PER: 419.5倍)
 時価総額: 1,779.6億円

 公開価格、追加売り出し株数、親引けそろって上限で決まった。引受価額は4700円。訂正目論見書によればブックビルディングの状況は、申告された総需要株式数が公開株式数を十分に上回り、総件数が多数にわたっていたうえ、価格ごとの分布は仮条件の上限価格に集中していたことが特徴だった。公開株式数以上の需要が見込まれる価格であり、市況や上場までの期間などを総合的に勘案した。

 今回は仮条件発表即日でブックビルディング入り、わずか4日間といった機関投資家のみの販売になる欧米に合わせた日程だったが、機関投資家の人気は高く、成り行き注文が相次いだとの観測が出ている。海外配分比率のさらなる引き上げは見送られたものの、これにより過去最高比率での配分が成立することになった。
 弊社では公開価格を支える理論を導き出すことはできない。原資は企業の採用費である点は変わらず、求人サイト株のPERはヒストリカル的にも20倍台で既に相場が固まっていることからすると、公開価格の段階で評価は過大ではないかと考える。だが、資金力のある海外勢が高く評価するなら、美人投票理論により少なくとも短期的にはそちらに従うことになろう。今回も配分はロングオンリーが中心のもようで、公開株の大半は握られたまま市場には出てこない可能性が高い。実質70億円弱規模の案件であり、引き続き堅調な初値展開を想定しておく。
初値予想
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初値予想: 6,250円(今期予想連結PER: 524.3倍)
初値買い妙味: B

 初値堅調を予想する。既存の求人サイト大手とそん色ない時価総額には警戒感も強いが、海外勢を中心とする機関投資家には経営者手腕への期待や独自のビジネスモデルが高く評価されているもよう。海外勢の高い評価を背景に初値は押し上げられると考える。

 ハイクラス求人サイト「ビズリーチ」の運営が主力。そのほか人材管理用のクラウドソフトを提供するハーモス事業なども展開している。ビズリーチ事業は2007年8月から開始したが、2020年2月に多角化を目的に持ち株会社制に移行しており、上場する法人格はその際に設立された。
 ビズリーチは求職者(会員ユーザー)と採用側に加え、ヘッドハンター(人材紹介会社)の3者をマッチングすることに特長がある。採用者に加えて人材紹介会社からも収益を獲得しており、さらにプレミアム会員に限定してだが求職者からも月額利用料を取っている。
 採用企業や人材紹介会社からの収益はプラットフォーム利用料、追加料金、採用が決まった際の成功報酬の3つからなり、このうちプラットフォーム利用料と追加料金はリカーリング(継続収益)売上高に分類され、求職者向けのプレミアム課金と合わせビズリーチ事業のうちの3割弱を占める。

 これまでビズリーチ事業により急成長してきたが、今期は新型コロナにより雇用情勢が悪化した影響を受ける。今21.7期は3%増収に減速する一方、販管費は前期同様1割増を計画しており、営業利益は前期比56%減の9.6億円に縮小する。このため公開価格のPERは400倍を超えている。

 だが、求人関連株は多かれ少なかれ新型コロナの影響を受けており、各社の株価は既に次期の回復を織り込んでいる状況だ。このため3月決算でまだ決算発表を通過していないところのPERは異常値になっているところが多い。コンセンサスならだいたい25倍に収れんする傾向となっている。求人サイト各社のPERは過去の統計的にも20倍台で推移する傾向だ。
 ただし、公開価格による時価総額は東証1部大手のエンジャパンに匹敵する。PER25倍になるためには、来期の営業利益で110億円を計上する必要がある。今期の反動で4割増収を達成したとしても、弊社の計算上では40億~70億円弱がせいぜいといったところだ。

 競合他社に比べて極めて高い評価になっている要因は、人材紹介会社も加わる仕組みによるものと推測されるが、系列の紹介会社が加わる形式で似たような形のものは以前から競合にも存在する。そもそも人材紹介会社の収益源も採用企業からの支払いによるもであり、採用費をどう分け合うかの問題に過ぎない。同社だけを高く評価する理由にはならないと考える。今回は売り出しが公募より多い出口型のIPOとなっているが、ほとんどの売出人は市場で売却する分を残さずに売り出しに回しており、売却価格にはかなり満足している様子もうかがえる。

 それでも需要は旺盛だったもようで、公開価格は想定価格から15%弱上振れして決定された。機関投資家、特に海外勢の評価が高いようで、公開株数の9割近くを彼らが持って行く形になった。これは過去最高の配分比率である。上場直前の21年1月にはこれを上回る5123円での取引実績があったが、これも買い手は海外のファンドだった。

 海外勢の高い評価は、国内の雇用事情に疎いことによる過大評価ではないかと疑う。だが、少なくとも短期的には資金力のある彼らの意見に株価は従うことになろう。雇用環境は国によって大きくことなっており、国内のみで事業展開する同社に国際比較は本来適当ではないのだが、海外勢が自国の同業との比較で割安と判断している節もある。米インディードを買収したリクルートは22.3期コンセンサスでもPERは約45倍と高い。
 また、公開規模は新興市場ではメルカリ以来の規模になるが、最近はグロース株で海外に配分された分は市場に出回りにくい傾向だ。過去最高に高い海外配分比率に加え、Zホールディングスの投資ファンドに割り当てられた親引けを差し引くと、実質的な吸収金額は68億円まで絞られる。

 半面、足元では緊急事態宣言への警戒感などからTOPIXは再び大幅安となっている。景気による影響を受けやすい業態ということで、求人サイト各社の株価も軒並み安だ。直近のグローバルオファリング案件で比較的初値が抑えられたAppierやウィングアーク1stを参考に、初値は公開価格を約25%上回る6250円で予想する。
初値分析
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初値: 7,150円(今期予想連結PER: 599.8倍) / 上昇率: 43.0% / 高値: 7,490円 / 安値: 6,600円 / 終値: 7,000円
出来高: 6,123,400株 / 対公開株数: 44.9% / 初値出来高: 1,294,000株 / 初値売買代金: 9,252,100,000円

 堅調な初値が付いた。国内株が前日まで全面安するなかだったが、直前の寄り前気配は4割高となる7000円が掲示。この日は一転して全面高となるなか、節目を超えてからの売り買い一致となった。
 売買代金は今年の案件のなかではココナラに次ぐ90億円超に上っており、海外勢から大量の買いが入ったと推測される。公開規模は682億円と大きかったが、公開価格を4割以上上回っても公開株式数から親引けを差し引いた株数に対する売却率は9.6%と異例の低さ。規模の割に需給的な重さは感じられなかった。今回も海外勢に配分された株はほとんど出てこなかったようだ。

 寄り付き後は上値の重い展開となった。直後のもみ合いで公開価格の1.5倍寸前を付ける場面があったが、後場に入ると失速。もともとバリュエーションについては見方が分かれるプライシングだっただけに、上値を切り下げる展開になった。ただ初値を割り込むと6000円台後半でのもみ合いになり、大引けの取引では直前から200円も飛ぶ形で7000円に戻した。

 しばらくは上値の重い展開になりそうだ。時価総額は約2500億円に膨れ上がり、新興市場ではマネーフォワードに次ぐ10位。だが、これはエンジャパンの1.5倍に相当する。しばらくは海外勢の買い支えが期待されるところだが、もともと説明の付きにくい公開価格だったが、さらに買いにくくなったことは否めない。初日の価格も引け取引で無理やり初値に戻させて終えたようなところがある。
 また、このセクターは新型コロナでイレギュラーな21.3期から22.3期のコンセンサスで株価が形成される傾向にあるが、今回はグローバルオファリングのため主幹事のリポートが出ていない。来期予想のコンセンサスがまったく形成されていないゆえ動きづらいといった面もある。もともと経営者への手腕から感情的にプライシングされたようなところがあり、買いは続きにくいのではないかと推測される。
IPOスケジュール
マーケットデータ
日経平均 38,079.70 +117.90
TOPIX 2,677.45 +14.30
グロース250 659.87 +9.75
NYダウ 37,753.31 -45.66
ナスダック総合 15,683.37 -181.88
ドル/円 154.36 -0.02
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