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バリュー/グロース倍率を活用して相場のトレンドを見極め
当該コラムは、2020年08月に「トレーダーズ・プレミアム」向けに掲載したものを加筆・修正しております。 「トレーダーズ・プレミアム」では定期的に新作コラムを掲載しております。 ぜひご加入をご検討ください。

バリュー/グロース倍率を活用して相場のトレンドを見極め

バリュー/グロース倍率とは

 投資に関するニュースを見ていると、「きょうはバリュー株の買い戻しが優勢でした」や、「グロース優位の展開が続いています」といった言葉を聞くことがあると思います。これらは何を意味しているのでしょうか。「バリュー株」、「グロース株」の違いは投資スタイルにも影響してくるとても重要な情報です。今回はそれぞれの特徴を知ることで、相場のトレンドを見極める材料として役立てたいと思います。

 まず、定義から確認してみましょう。「バリュー株」とはその名の通り、割安な株のことです。企業としてある程度成長しており、大幅な利益成長が期待できないなどの理由から、PERなどの指標において平均的な水準よりも安値で放置されている企業のことを指します。

 一方、「グロース株」は利益成長の途上にある企業で、高い成長性から株価もそれを織り込んでPERなどからは高めに見える水準にあることが多いです。増収増益を続け、数年で株価が数倍から数十倍になることもあります。いわゆる「テンバガー」と呼ばれる銘柄の多くはグロース株になります。

 グロース株は「成長性」を買い、バリュー株は「見直されるはずの値幅」を買うことになります。ただし、グロース株が本当に成長を持続できるかはわかりませんし、バリュー株の見直しがいつ来るのかを予測することも極めて難しいです。

 ただ、相場において今バリュー株が買われているのか、グロース株が買われているのか、という流れはある程度把握することができます。東証では「バリュー株」と「グロース株」の値動きをそれぞれ指数化しており、日本経済新聞などを見ることで知ることができます。冒頭で述べたニュースなど出てくるのは、この「TOPIXバリュー指数」(以下、バリュー指数)、「TOPIXグロース指数」(以下、グロース指数)の動きをもとにしたものです。指数の算出方法など、詳しくは東証の株価指数ラインナップのページのTOPIXスタイルインデックスの欄に載っているので、気になる方はチェックしてみてください。

 投資をする上で気になるのは、バリュー株とグロース株、どちらに投資した方が儲かるのか、という点でしょう。これに対しては、かつては長期にわたってバリュー株が優位な時期が続いていました。先ほどテンバガーの例を出したように、グロース株の方が大きく株価が上昇するイメージがある方もいらっしゃるかもしれませんが、20年30年といった長期で見た場合、バリュー株のリターンはほとんどの期間で市場平均を上回っており、逆にグロース株は市場平均を下回っていました。「投資をするならバリュー株」というのは長く投資の経験のある方なら鉄則だったというのはご存じでしょう。

 しかし、2010年前後からその法則が変わり、直近の2020年までほぼグロース優位の展開が続いています。下のグラフは2010年ころから直近の2020年7月まで期間(月足)のバリュー指数をグロース指数で割った「バリュー/グロース倍率」を表したものです。日経平均株価をTOPIXで割ったNT倍率のようなものと言えるでしょうか。グラフが上昇するほど、バリュー株が優位、下落するとグロースが優位ということになります。

 動きについては一目瞭然で、特に2012年ころからほぼグロース優位の展開が続いていることがお分かりいただけると思います。要因としてはネット関連企業の台頭が挙げられるでしょうか。米国株になりますが、MSCIの算出するグロース指数においては、アップル、アマゾン、マイクロソフト、フェイスブックなどはすべてグロース株に分類されています。2010年代はグロース優位と言われるのも納得せざるを得ない説得力がありますね。ただ、数カ月単位でみれば、バリューが優位になったり、グロースが優位になったりと入れ替わっています。

 上のグラフは2018年以降について、週足でバリュー指数、グロース指数、バリュー/グロース倍率を表したものです。基本的にはグロース優位ですが、2020年に入ってからの動きをみると、3月、6月、そして8月にかけてバリュー/グロース倍率が上昇しています。基本的にはバリュー指数が優位となるときは、急落後の戻り相場の局面になることが多いです。3月はコロナショックによる急落から、6月はFOMCショックによる急落からの戻りがあり、そこでバリュー優位となっています。7月末から8月にかけては感染再拡大が意識され、6日続落となったあとの戻りが相当します。

 2020年以降は特にグロース優位の展開が続いており、成長株、とくにコロナ禍でも業績を伸ばしている企業に注目が集まりがちです。しかし、そうした株も調整する局面があり、バリュー株が優位となる局面があります。急落後の戻り相場こそバリュー株に投資するチャンスと言えるでしょう。ただ、戻り相場におけるバリュー優位の期間は限定的で、あまり長く続かないことには注意が必要です。タイミングを見極めるためにも、常にバリュー指数・グロース指数をチェックして、投資に役立ててください。

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マーケットデータ
日経平均 37,934.76 +306.28
TOPIX 2,686.48 +22.95
グロース250 644.61 +4.49
NYダウ 38,239.66 +153.86
ナスダック総合 15,927.90 +316.14
ドル/円 156.56 +0.92
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