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IPOの必須知識!知っておきたいロックアップ解除~基本編~
当該コラムは、2023年08月に「トレーダーズ・プレミアム」向けに掲載したものを加筆・修正しております。 「トレーダーズ・プレミアム」では定期的に新作コラムを掲載しております。 ぜひご加入をご検討ください。

IPOの必須知識!知っておきたいロックアップ解除~基本編~

はじめに

 ロックアップとは新規上場などにあたり、既存株主などに対してその保有する株式を売却できない期間を定めるものです。これは上場後の需給を安定させることが目的です。ロックアップがかかることにより、「上場直後に大株主から大量の売りが出て暴落する」という事態を防ぐことができます。

ロックアップの種類

 ロックアップには、制度ロックアップと任意ロックアップがあります。

制度ロックアップ 東京証券取引所が定める規定により上場後一定期間株式を保有することを求めるもの
任意ロックアップ 任意で証券会社が大株主に一定期間株式を売却しないよう求めるもの

 制度ロックアップで定められた期間中に売却してしまった場合は規定違反となります。2021年には、モダリスでそういった事例がありました。ただ、これはレアケースであり、ロックアップは基本的に順守されています。

ロックアップの日数

 ロックアップの日数は、制度ロックアップであれば上場日以後6カ月間が基本です。任意ロックアップは上場日から起算して180日目が多いですが、上場日から起算して90日目もよくあります。上場日から起算して360日目というのもたまにあります。

制度ロックアップの期間 割当てを受けた日から上場日以後6カ月間を経過する日(当該日において割当株式に係る払込期日または払込期間の最終日以後1年間を経過していない場合には、割当株式に係る払込期日または払込期間の最終日以後1年間を経過する日)まで
任意ロックアップ 上場日から起算して90日目
上場日から起算して180日目
上場日から起算して360日目
ロックアップの価格による解除

 ベンチャーキャピタルなどが任意ロックアップ対象となる場合において、価格によるロックアップ解除条項がつくことがあります。

 ロックアップの価格による解除は、90日のロックアップに公開価格の1.5倍以上という解除条項が付くケースが多いのですが、180日に公開価格の1.5倍以上の解除条項が付くケースもあります。さらに、公開価格の2倍以上、3倍以上といった厳しい解除条項もたまにみられます。

 このロックアップの価格による解除が付いている場合は、初値形成にも影響を与えます。ベンチャーキャピタルの保有する株が多く、さらに1.5倍以上という解除条項がついていれば、「公開価格の1.5倍で大量の売りが出るかもしれない」という意識が働きます。このような場合、公開価格の1.5倍目前で初値が形成されるという結果になることがあります。
 なお、1.5倍以上の解除条項は付くものの、「東京証券取引所における初値が形成された後」という文言が追加されるケースがあります。この場合には初値形成に影響を与えることはありません。

ロックアップの確認方法

 ロックアップは、有価証券届出書(新規公開時)で確認することができます。では有価証券届出書(新規公開時)の確認方法とどこの項目をみるかをみていきます。

1. 有価証券届出書(新規公開時)をチェック
 有価証券届出書(新規公開時)はEDINET(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/week0010.aspx)でみることができます。EDINETは、「金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム」です。
 具体的には、以下のように社名を入力し、さらに書類種別の「その他の書類」にチェックを入れて検索します。なお、上場承認から1年以上経過している場合は、提出期間を「全期間」としてください。

EDINE(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)

 以下は検索結果です。検索したソシオネクストは2022年9月6日に上場が承認されましたので、その日の15時に有価証券届出書(新規公開時)が提出されています。

EDINE(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)

2. 制度ロックアップの確認方法
 制度ロックアップは、有価証券届出書(新規公開時)の「第四部 株式公開情報」→「第2 第三者割当等の概況」をみることになります。ここには「第三者割当等による株式等の発行の内容」や「取得者の概況」が記載されています。

 「第三者割当等による株式等の発行の内容」をみると以下のようにいつ発行されたかを確認することができます。そして、保有期間等に関する確約に「(注)2」と書いてあれば制度ロックアップに該当すると思ってください。

制度ロックアップの確認方法

【参考】有価証券届出書(新規公開時)の保有期間等に関する確約の(注)2の実際の記載内容
 「2.同施行規則第268条第1項第1号の規定に基づき、当社は、割当てを受けた者との間で、割当てを受けた株式(以下「割当株式」という。)を、原則として、割当てを受けた日から上場日以後6ヶ月間を経過する日(当該日において割当株式に係る払込期日または払込期間の最終日以後1年間を経過していない場合には、割当株式に係る払込期日または払込期間の最終日以後1年間を経過する日)まで所有する等の確約を行っております。」


3.任意ロックアップの確認方法
 任意ロックアップは、有価証券届出書(新規公開時)の「第一部 証券情報」→「第2 売出要項」→「募集又は売出しに関する特別記載事項」の「3.ロックアップについて」に記載があります。
任意ロックアップについては、ロックアップの期間はもちろんですが、価格による解除条項が付いているかどうかもしっかりと確認するようにして下さい。

・ABEJA(5574)の事例
 以下のように、第1段落に180日のロックアップ対象について、第2段落に90日のロックアップ対象について、第3段落に90日+1.5倍の解除条項付きのロックアップ対象が記載されていました。

ABEJA<5574>の事例
まとめ

 今回はロックアップについての基本的な内容を説明しました。ルールの話であるため、少し難しかったかもしれません。ただ、ロックアップについて知っているのと知らないのでは投資の結果に大きな違いが出ることもあります。IPOや直近上場株への投資の際にはロックアップを確認するようにしてください。
 続編となる「IPOの必須知識!知っておきたいロックアップ解除~実例編~」では、ロックアップがどのように株価に影響を与えたかを事例をみながら説明しています。ぜひこちらもご覧ください。

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