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ROEで企業の効率性をチェック
当該コラムは、2020年09月に「トレーダーズ・プレミアム」向けに掲載したものを加筆・修正しております。 「トレーダーズ・プレミアム」では定期的に新作コラムを掲載しております。 ぜひご加入をご検討ください。

ROEで企業の効率性をチェック

 株式投資をする際の代表的な指標の一つとして、ROE(自己資本利益率)があります。「JPX日経インデックス400」に採用されるための基準の一つにもROEが使われています。また、この指標を経営目標に掲げている企業も多くあります。今回はこのROEについて解説します。

 ROEはReturn on Equity の略で、自己資本を当期純利益で割ることで求められます。自己資金を活用してどれだけの利益を挙げているかをみる指標で、計算式は以下のようになります。この数値が高いことは、経営の効率性が良いことを意味します。

ROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
ROEを高めるには?

 ROEを高める方法としては、当期純利益を増やすという手段があります。企業は利潤を追求しているわけですから、利益を増やせばROE向上にも貢献するということは、イメージしやすいかと思います。また、自己株取得(自社株買い)・消却を実施することで、自己資本をスリム化するといった方法や、借り入れ(他人資本)を増やしてレバレッジを高めるといった方法もあります。自社株買いを発表する企業の株価は上昇することが多いですが、これはその行動がROEの改善につながると多くの投資家が期待することが背景にあります。

高ROE銘柄の注意点

 一般的にはROEは低いよりは高い方が良く、高ROE銘柄は優良銘柄と言えます。ただし、ROEが高くても株価の評価が伴わない場合、以下のような理由が考えられます。

①利益に占める一時的要因の割合が多い
 ROEで使用する利益は当期純利益となりますので、本業からの収益となる営業損益に加えて、経常損益、特別損益の影響が加味されます。遊休土地や金融商品を売却した、 ヘッジ目的の為替取引で利益が出たなど、その出どころは問わず利益が増えればROEを押し上げる要因となります。ただし、それが一時的要因であれば、翌年はその分がはく落するため、市場では高いROEが継続しないとみなされることがあります。

 ROEは単年度では特殊要因で上下することも多く、複数年での推移を確認することをお勧めします。「JPX日経インデックス400」のスコアリングでもROEに関しては3年平均を用いています。

②他人資本の比率が高すぎる
 借入金を増やして他人資本を積極活用すれば、ROEを高められる可能性があります。ただし、その場合に気をつけないといけないのが財務の悪化です。 低金利環境が長期化しているとはいえ、借入額が増えればその分、利払い負担が重荷となります。

 景気が良い時の不動産業界などでは、不動産の売買が活況となり、短期間で大きな資金が動く上に、その際に得られる利益も大きくなります。業績が良いので資金調達も容易となり、企業も積極的に物件を仕込みたいため、 借入額を増やす傾向があります。こういった好循環が生まれると、少ない自己資本でも大きな利益を挙げることができ、ROEも一時的には大きく上昇します。

 しかし、これが逆回転して不動産売買が低調になると、本業から得られる利益が減少します。利益を出せず損失となることもあり、過大な借り入れを行っていた企業は、本業の採算悪化と多額の利払い負担に苦しむことになります。 そうなるとROEは一気に低下します。利益の増加ペースが速い新興企業や、新事業が大当たりした企業なども、今がチャンスとばかりに短期的に借入金を増やす傾向がありますが、身の丈に合っているかという点は確認しておく必要があります。

まとめ

 企業が会社の資産を有効に使えているかという点は、株式分析において非常に重要です。ROEも企業の効率性を見極めるには非常に活用度の高い指標となります。本業の利益が好調で、それが長期間続くことでROEが上昇傾向にあるような企業は有望といえます。 ただ、指標の性格上、今回のコラムで紹介したような点には注意を払っておく必要があります。ROEが急上昇した銘柄などは、損益計算書や財務指標なども併せてチェックして、高いROEをこの先も許容できるだけの要素があるかどうかを確認しておきましょう。

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