「方向性指数（ＤＭＩ）」でトレンドの方向性と強弱を見極める～前編～

　ＤＭＩ（Directional Movement Index）は米国のＪ.Ｗ.ワイルダー氏が開発したもので方向性指数と呼ばれるテクニカル指標です。テクニカル指標には大きく分類すると３つあり、１つ目はトレンド系指標、２つ目はオシレーター系指標、そして３つ目はボラティリティ系指標です。オシレーター系指標では大きな相場変動が発生した場合、有効性が発揮しづらくなります。ＤＭＩは、その弱点を補うために、トレンド系指標とボラティリティ指標を組み合わせ、トレンドの「方向性」や強弱を見極めようとするものです。今回の前編では、トレンドの「方向性」を確認する指標を中心に解説し、次回の後編では、トレンドの「強弱」を確認し、ＤＭＩの総合的な見方を解説いたします。

　ＤＭＩの特徴は、終値の比較を無視して、当日の高安が前日の高安と比べてどちらが大きいかを見極め、相場の強弱を読むところにあり、価格の変動幅（ボラティリティ）からトレンド分析をしている点にあります。
　構成要素は、±ＤＭ、ＴＲ、±ＤＩ、ＤＸ、ＡＤＸ、ＡＤＸＲなど中間指標がたくさんあるため、少し煩雑となります。使用する日数は一般的に14日が用いられます。

◇ＤＭとは？
　前日比の高値更新幅を＋ＤＭ、前日比の安値更新幅を－ＤＭとします。

　ＤＭは、トレンド方向に動いた値幅を表します。＋ＤＭと－ＤＭを比較し、値の大きいほうに相場が動いていると捉えます。仮に、相場が上方向に動いている場合、下方向の動きは無視します。価格は必ず上下いずれかへ動き、上下同時には動かないからです。

　ＤＭ幅の大きいほうを相場のトレンドとみなします。もっとも、現実には、はらみ足のように当日の値動きが前日の値幅の中に全て収まってしまったり、当日の高値・安値が前日と全く同じになったりする場合もあります。これを「ゼロＤＭ」と呼び、方向性がないことを意味します。

◇ＴＲ（トゥルーレンジ）とは？
　ＤＭだけでは、その動きが大きいのか小さいのか分かりません。そこで、日々の変動幅（ボラティリティ）と比較します。日々の変動幅は、(当日高値－当日安値)、 (前日終値－当日高値)の絶対値、 (前日終値－当日安値)の絶対値のうちで最大値を選びます。ただ、ＴＲは日々の変化が大きいため、ＡＴＲ（ＴＲの平均）で傾向をつかみます。一般的には１４日の平均値を使います。

◇ＤＩとは？
　ＡＴＲと比較して、上昇傾向（＋ＤＭ）がどの程度の大きさだったかを＋ＤＩで表し、同様に下降傾向（－ＤＭ）がどの程度の大きさだったかを－ＤＩで表します。

　図表１は、ＫＤＤＩの日足チャートです。基本的に上昇トレンドでは、＋ＤＩが－ＤＩを上回って推移します。＋ＤＩが増大すると同時に－ＤＩが減少するときは上昇の勢いが強い。価格が天井をつけるのと概ね同じタイミングで＋ＤＩも天井をつけます。＋ＤＩが－ＤＩをまだ上回っていても、＋ＤＩが減少すると同時に－ＤＩが増大するときは、すでに下降トレンドに転じていることが多いです。
　逆に下降トレンドでは、－ＤＩが＋ＤＩを上回って推移します。－ＤＩが増大すると同時に＋ＤＩが減少するときは下降の勢いが強い。価格が底入れするのとほぼ同じタイミングで－ＤＩも天井をつけます。－ＤＩが＋ＤＩをまだ上回っていても、－ＤＩが減少すると同時に＋ＤＩが増大するときは、すでに上昇トレンドに転じていることが多いです。＋ＤＩと－ＤＩが似たような水準で頻繁に交互するときはもみ合い相場にあると想定されます。
　基本的には＋ＤＩが－ＤＩを上回ったタイミングを買いシグナル、－ＤＩが＋ＤＩを上回ったタイミングを売りシグナルとします。これらを達成した場合はトレンド転換と考え、あらかじめ設定した損切りの水準等にかかわらず、建玉の手仕舞いや新規のポジションをとるべきです。

　以上がトレンドの「方向性」を確認する指標となります。特定期間の上昇と下落を値幅面で相対比較し、どちらの方向に優位に傾いているかを判断しました。次回の後編では、トレンドの「強弱」を確認し、ＤＭＩの総合的な見方を解説いたします。