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コラム
裁定取引残高の推移から相場動向を予測しよう
当該コラムは、2021年7月に「トレーダーズ・プレミアム」向けに掲載したものを加筆・修正しております。 「トレーダーズ・プレミアム」では定期的に新作コラムを掲載しております。 ぜひご加入をご検討ください。 会員サービス案内はこちら
裁定取引残高の推移から相場動向を予測しよう

 今回は相場の方向性を探る上で、市場関係者から注目度の高い裁定取引動向について説明します。裁定取引は機関投資家を中心とした売買となりますが、株式市場に与える影響は大きく、裁定取引残高の推移を確認することで相場の動向を予測しやすくなります。

裁定取引とは

 裁定取引とは、2つの商品の間で生じた価格差を利用して利益を獲得する取引となります。2つの商品の間で価格差が生じた場合、割高な商品を売る一方で割安な商品を買い、価格差が縮小した時点でそれぞれ反対売買を行うことで利益を獲得することができます。

裁定取引のイメージ

 裁定取引には、現物市場と先物市場との取引、異なる先物市場間での市場間取引、同一の先物で限月の異なる限月間での取引などがあります。

裁定取引の種類
「裁定買い」と「裁定売り」 について

 今回は現物市場(株価指数)と先物市場(株価指数先物)の取引を中心に説明します。代表的な裁定取引としては、「日経平均株価」と「日経225先物」との取引が挙げられます。
 裁定取引には、「裁定買い(先物売り・現物買い)」「裁定売り(先物買い・現物売り)」があります。「裁定買い」「裁定売り」のどちらが行われるかは先物価格と理論価格の動き次第となります。
 理論価格とは、現物価格を基準に算出した「先物の理論上の価格」となります。先物取引は現時点ではなく一定期間後に決済される取引となるため、決済日まで金利がかかります。現物価格に持ち越し費用(金利など)を加味しますが、決済日になると「現物価格=理論価格」が成立します。

 ※ 理論価格=現物価格×{1+(短期金利−配当利回り)×(決済までの日数/365)}

 先物価格が理論価格を上回る状態になると、「裁定買い」が行われやすくなります。理論価格より割高な先物を売却すると同時に現物を買付する取引が行われることで、先物価格と理論価格のかい離が修正されます。先物価格が理論価格に比べて割高な状況が頻繁に発生するような場合(裁定買いが多く行われるような場合)は、市場参加者が将来の価格が高くなると考えている、つまり相場の基調が強いと判断されます。

裁定買い

 一方、先物価格が理論価格を下回る状態になると、「裁定売り」が行われやすくなります。理論価格より割安な先物を買い付けると同時に現物を売却する取引が行われることで、先物価格と理論価格のかい離が修正されます。先物価格が理論価格に比べて割安な状況が頻繁に発生するような場合(裁定売りが多く行われるような場合)は、市場参加者が将来の価格が安くなると考えている、つまり相場の基調が弱いと判断されます。

裁定売り

 つまり、先物価格の先高観が強ければ「裁定買い」が行われやすく、逆に先物価格の先安観が強ければ「裁定売り」が行われやすいとイメージしてみてください。

SQ日が近づくにつれ、先物価格と現物価格のかい離が縮小

 現物価格と先物価格は通常かい離していますが、先物取引はSQ日に取引が清算されるため、SQ日には現物価格と先物価格が同じとなります。日経225先物では、3、6、9、12月の第2金曜日がメジャーSQ日となり、満期日を迎えます。現物価格と先物価格の間でかい離があったとしても、SQ日が近づくにつれ両者のかい離は縮小していきます。
 例えば、日経平均株価と日経225先物で「裁定買い」を行っていた場合、SQ日を前に先物価格が現物価格に接近し割高感が解消されるタイミングを見計らって反対売買(先物買い戻し、現物売り)を行うことで利益を獲得することができます。反対売買で裁定買い(先物売り・現物買い)のポジションを解消する取引「裁定解消売り」と呼ばれています。

裁定取引残高の推移から相場動向を予測しよう

 日経平均株価や日経225先物の裁定取引などは、機関投資家を中心に売買されています。実際に東京証券取引所のホームページを見ると、裁定取引の売買を行っているのは、野村証券やみずほ証券、ソシエテ・ジェネラルなどの大手金融機関となっています。
 多額な資金と高速取引が可能なシステムが必要となることから、個人投資家が裁定取引を行うのはほぼ不可能とみられています。一方、裁定取引動向を需給指標として注目し、相場の動向を予測するのに役立てることは可能となります。
 東京証券取引所は毎週第3営業日に前週末の取引残高を発表していますが、その推移を確認することで相場の動向を予測しやすくなります。裁定買い(先物売り・現物買い)残高が多ければ、将来の売り圧力が高まります。それは裁定取引を解消する際に現物株が売却されることになるからです。逆に裁定売り残高(先物買い・現物売り)が多ければ、将来の買い圧力が高まることになります。

日経平均株価と裁定取引残高の推移

 上記は2020年1月以降の日経平均株価と裁定取引残高の推移です。同年2月以降に世界各国で新型コロナウイルス感染が拡大し、景気悪化懸念を背景に日経平均株価は3月中旬にかけて急落しました。裁定売り残高は増加傾向となり、5月22日時点で2兆5707億円まで増加しました。そこをピークに減少しましたが、10月にかけて2兆円近辺の高水準で推移していました。この間、日経平均株価も23000円近辺でもみ合いが続き、上値追いには慎重姿勢が見られました。
 しかし11月3日に米国の大統領選挙が実施された後はアク抜け感から、日経平均株価は上昇基調を強めました。裁定取引残高をみると、売り残高は減少傾向、裁定買い残高は増加傾向となり、5月22日時点では裁定売り残高と裁定買い残高の差し引きが2兆1040億円の売り越しとなっていましたが、11月以降は急速に縮小していきました。裁定売り残高の減少、つまり現物株の買い戻しが日経平均株価の押し上げにつながったとみられます。2021年2月16日には30714円の高値を付けましたが、需給の改善が相場上昇の一因となりました。つまり、日経平均株価に関し裁定売り残のポジション解消のための買い戻しが相場上昇の原動力となったと言えそうです。
 こうしてみますと、裁定取引残高は相場の方向性を探る上で有効な統計の一つと捉えることができます。裁定売り残高が増加した場合、目先の売り圧力につながる一方、「将来の買い戻しの余地が大きくなる」と考えることができます。「強材料が出てくれば、一気に買い戻しが入る可能性があるのではないか」などと予想することができます。また裁定買い残高の水準をみると1兆円を下回る低水準で推移していることから、「今後、景気回復や企業業績の改善傾向が顕著となれば、裁定買い残高が増加し目先の株価上昇を期待できるのではないか」などと予想することができます。相場の方向性の手掛かりを掴む指標の一つとして、裁定取引動向の推移を確認するようにしてみて下さい。

裁定買い残高
裁定売り残高